リバースエンジニアリングとは
機械は摩耗や疲労によって部品が故障してしまう可能性があります。「そろそろ故障しそう…」という場面になったときに、スペアパーツが手元にあれば心強いでしょう。機械が新しいものであれば、メーカーに注文すればスペアパーツも問題なく手に入るかもしれませんが、古い機械となればそうはいきません。
なぜなら、多くのメーカーでは、スペアパーツの保有期限というものを設定しており、製品発売から10年といったような期間を設けているからです。保有期限を超えてしまった製品はパーツを入手することは非常に難しいと言えるでしょう。
そんなときに利用したいのが、今機械に組み込まれている部品を元に複製する「リバースエンジニアリング」です。リバースエンジニアリングでは、図面や3Dデータなどがなくても、部品の現物を3次元のスキャナなどを使ってスキャンし部品を複製できます。リバースエンジニアリングを利用すれば、古い機械のスペアパーツや、製造元不明の金型のスペアパーツなどであっても、現物さえあれば問題なく複製できます。
リバースエンジニアリングを使うことで、既存品をそのまま利用するよりもメリットを得られる場合もあるので、そのようなケースについても紹介していきます。
リバースエンジニアリングでスペアパーツを作成するメリット
リバースエンジニアリングでスペアパーツを作成するメリットには、次のようなものがあります。
- 自由に設計変更ができる
- パーツの寿命を伸ばせる
機械に組み込まれている部品が、優れた性能を持っているとは限りません。既存品でそのような傾向が見られた場合、設計変更するとよりパーツの寿命を伸ばせます。
リバースエンジニアリングでは、3Dスキャンした後に3Dデータを作成します。この既存品を元に作成した3Dモデルを使って、強度を高める設計変更を施すことも可能です。こうすることで、コピーでありながら既存パーツよりも優れた設計に変更できてしまいます。
また、コストの削減やパーツの交換頻度を上げるために、メーカーが安い材料を使用している場合もあります。リバースエンジニアリングを行う際には、合わせてパーツの材質を分析できるので、現在の材質が製品用途に適しているかどうかを確かめられます。
例えば、分析の結果、SS400材を使用していたのであれば、耐摩耗性の高いS45Cなどを採用することでパーツの寿命を飛躍的に伸ばせるかもしれません。錆の発生が問題なのであれば、錆に強いステンレス系の材料を採用するなどの工夫もできます。形状だけでなく、材質も変更できるのはリバースエンジニアリングの大きな強みと言えるでしょう。
リバースエンジニアリングでのスペアパーツの作成方法
リバースエンジニアリングでスペアパーツを作成する場合、次のような手順を踏みます。
- 3Dスキャン
- データ修正→3Dモデル化
- 加工データ作成→加工
はじめに既存品のスキャンを行います。3次元計測器や3Dスキャナを使うのが一般的です。どちらでも形状をスキャンできますが、要求する精度や形状、大きさなどで使い分けをします。
スキャンした段階では、3Dモデルのデータではなく点のデータとなっています。点のデータから面のデータに置き換え、面のデータからソリッドと呼ばれる一般的な3Dデータを作ります。もし、既存品に設計変更を加える場合は、ソリッドデータに変更を加えます。ソリッドデータ化した段階で、以降の工程は一般的な製造工程と同じような流れになります。
ソリッドデータを作成することで、工作機械の加工データを容易に作成できるようになります。リバースエンジニアリングでスペアパーツを作成する場合、マシニングセンタや5軸加工機のような切削加工で作成するケースがほとんどです。
多種多様な用途で活用できるリバースエンジニアリング
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