土屋精機製作所ではダイカストの切削加工に長年の経験とノウハウがあります。
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アルミダイカストは軽量で強度があり、複雑な形状も作りやすい金属素材です。自動車や家電製品など多様な分野で幅広く使用されています。しかし、製品の用途や要件によってはアルミダイカストに2次切削加工(追加工)が必要です。この記事では、アルミダイカストの基礎知識を踏まえ、アルミダイカストに2次切削加工を施すメリット・デメリット、追加工が必要な理由や難しい理由を解説します。

アルミダイカストとは

アルミダイカストはアルミニウム合金を溶融させ、金型に射出して成形したものです。以下、アルミダイカストの特徴や製造方法、用途について解説します。

アルミダイカストの特徴

ダイカストマシンに取り付けられた金型に、溶かしたアルミ合金を高速高圧で充填することにより、1サイクル数十秒程度で連続的に鋳造することが可能です。こうして製造されるアルミダイカストには、次のような特徴があります。

・大量生産に適している

・複雑な形状にも対応できる

・寸法精度を高められる

・生産コストが低い

・素材表面(鋳肌)が美しい

アルミダイカストはアルミ合金で作られているため、軽量で耐食性にも優れています。通常の鋳物と比べて溶湯注入を高速におこなうことが可能です。

アルミダイカストの製造方法とアルミ鋳造との違い

アルミダイカストはダイカスト法によって製造されます。ダイカスト法とはダイカストマシンを使った金型鋳造法のひとつです。高い圧力をかけて金型の中に溶融金属を充填し、それを凝固させることで目的の形状を作ります。充填と凝固が短時間におこなわれるため、非常に生産性の高い鋳造方式です。ダイカスト製法の金型は金属製で、固定型と可動型を組み合わせるのが基本構成となります。

一方、アルミ鋳造は融点以上に熱して液体にしたアルミ合金を砂型に流し込み、冷やして固めるのが一般的です。金型の製造コストが不要で、大型の部品の製造や少量生産に向いています。

アルミダイカストの用途

アルミダイカストは、自動車関連を中心にOA機器、家電用品など非常に幅広い分野で用いられています。Al-Cu系合金やAl-Si系合金、Al-Mg系合金といった分類があり、用途によって使い分けられています。用途分類は下表を参考にしてください。

Al-Cu系合金 航空機用部品、航空機用エンジン部品、空冷シリンダヘッド、シリンダヘッド、ディーゼル機関用ピストン、重電機部品、架線用部品、自転車用部品、ポンプボディ、デフキャリア、マニホールドなど
Al-Si系合金 自動車用ホイール、自動車用ピストン、クランクケース、シリンダヘッド、水冷シリンダヘッド、空冷シリンダ、シリンダブロック、燃料ポンプボディ、プーリ、軸受、ケース、カバー、ハウジング、ブレーキドラム、ミッションケース、クラッチケース、ギヤボックス、航空機用エンジン部品、マニホールドなど
Al-Mg系合金 事務機器、船舶用部品、航空機用電装部品、架線金具など

ダイカスト+切削加工のメリット・デメリット

ダイカストは寸法精度が良いため、あまり2次加工は必要ないと思われがちです。しかし、後から切削加工をするオプションについても知っておくと製品開発に役立ちます。ここでは、ダイカストに2次切削加工をするメリットとデメリットを説明します。

ダイカストに2次切削加工をするメリット

より高精度の製品が作れる

ダイカストによって作られた製品の精度は比較的高いですが、対応できる形状の複雑さに限界があります。また、ダイカストは金型内で素早く冷却されるため、縮みやゆがみが生じたときには形状あるいは寸法のズレを修正しなければなりません。2次切削加工をおこなうことで、非常に複雑な形状においても高い製品精度を実現可能です。

設計変更の検討がしやすい

ダイカスト製品は金型によって作られるため、設計変更は容易ではありません。しかし、部分的な形状変更であれば2次切削加工で対応可能です。金型を作り直すよりも低コストかつ短期間に、製品改良やカスタマイズ変更を検討することができます。

ダイカストに2次切削加工をするデメリット

大量生産ではコストがかさむ

個々のダイカスト製品に2次切削加工をする場合、生産量が多くなるほどコストがかさんでしまいます。大量生産においては、2次切削加工なしでも十分な精度が得られるような金型設計を目指すべきでしょう。逆に試作品のような少量生産では、2次切削加工は有効な方法です。

同じ精度を保つのが難しい

ダイカストへ2次切削加工をおこなう際、製品一つひとつの形状や寸法に誤差がないようにするには高い加工技術が必要です。どこまで精度を追求するかにもよりますが、ダイカストの製造工程による個体差もあるでしょうから、同一精度を保つのは難しいケースがあります。表面処理や塗装といった後の工程にも影響が出るため、2次切削加工をおこなうかどうかは製品用途や要件に応じてよく検討しなければなりません。

アルミダイカストに追加工が必要な理由

一般的に、鋳物は型に溶けた金属を流し込ませて冷やすだけで、低コストで大量生産が可能な金属加工法です。中空の形状や複雑な形状などにも対応できるため、多様な用途があります。特にアルミダイカストで用いられるダイカスト法は、金型鋳造法の中でも高精度な大量生産に適しています。

しかし、アルミダイカストが精密かつ効率的な製造方法であるとはいえ、ダイカスト工程だけでは対応できない穴あけ加工やタップ加工、ねじ切り加工、フライス加工、研磨などを施すには2次加工が必要です。公差が厳しい部品や複雑な形状の部品を作る際、場合によっては追加工をおこなって精度を維持しなければなりません。

また、アルミダイカストは金型を製作することで大量生産を可能にしていますが、設計変更には柔軟に対応できないという欠点があります。ダイカストの金型を作り直す手間がかかる上に大きなコストがかさむためです。もしアルミダイカストに形状や寸法の変更をしなければならない場合には、追加工が最も有効な対応策といえるでしょう。金型を作り直すより簡単かつ低コストに修正できます。

以上の理由から、アルミダイカストを製品素材として採用するなら追加工の用意をしておくことが重要です。アルミダイカストの高精度化や設計変更が必要になったときに大きな助けとなりえます。ただし、追加工にも相応の時間や人件費がかかるため、生産ロットや製品要件によっては金型変更に踏み切ることも検討しましょう。

ダイカストの切削加工が難しい理由

鋳物の2次加工は難易度が高く、ダイカストも同様に切削加工が難しいとされています。その理由は以下のとおりです。

1)ダイカストの加工はデリケート

温度や湿度などの加工条件がわずかに異なるだけでも、仕上がりや外観に影響が出やすいです。

2)目的に合わせた治具が必要

高い精度を出したり複雑な形状を実現したりするには、目的に応じた治具を作らなければなりません。

3)ダイカストの個体差に応じて加工を調整

アルミダイカストが比較的高精度であるとはいっても、個々の形状や寸法は完全に同一とはなりません。誤差を見極めて臨機応変に対応する加工技術が必要です。

4)ダイカストの切削加工による機械の故障

鋳物やダイカストに使われる金属は柔らかく、切削加工をすると微細な切粉が生じやすいです。アルミダイカストも大量の切粉が出やすいため、工作機械が故障しないよう注意したり加工後にメンテナンスをおこなったりするといった手間が発生します。

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