リバースエンジニアリングとは
リバースエンジニアリングとは、既存品を3Dスキャナなどを使って測定し、測定データを元に複製品を作ったり、3Dデータ化して設計変更や解析をしたりする手法を指す言葉です。図面や3Dデータがなくても、既存品から図面や3Dデータを作れ、通常のものづくりとは工程が逆行しているためリバースエンジニアリングと呼ばれています。
リバースエンジニアリングで図面のない金型を3Dデータ化
リバースエンジニアリングの技術を使うと、図面のない既存品であっても図面化したり3Dデータ化したりすることができます。
よくある例では、現行で製造をしている製品であるにもかかわらず、昔に作った金型で図面が見当たらないケースです。シンプルな金型であれば、ノギスなどで計測して複製することもできるかもしれませんが、曲線が含まれる形状ではなかなか困難な作業なのが想像できるでしょう。
そんなときに活躍するのが、3Dスキャナを使って3D上に金型の形状を取り込み、複製したり補修できるリバースエンジニアリングの技術です。従来では測定が難しかった曲線的な形状であっても、点の集合体として3D上に取り込めるため、精度も高く取り込むことができます。
また、3D化した段階で金型の摩耗などがあっても、3D上で修正することもできてしまいます。このようにリバースエンジニアリングを用いれば、図面などのデータがない古い金型を、製造した直後と同じような状態で新規に製造できるわけです。
リバースエンジニアリングを使えば金型の補修部品も作成できる
金型全部を作り変える必要がない場合であっても、リバースエンジニアリングを使えば、補修部品を作成できます。
プレス金型で言えば、パンチやダイが繰り返しかかるプレスの圧力で変形してしまった場合などに有効です。また、変形してしまった部品であっても、3D上で変形前の形状を想定して復元することもできます。
「金型図面がないから部品の補修を諦めていた…」という場合でも、リバースエンジニアリングの技術を使えば、少ないコストで金型を復活させることもできてしまうのです。
また、変形しているということは、金型材質に問題がある可能性もあります。場合によっては既存部品の材質を調査して、より高品質で高強度の材質に切り替えることも可能です。
金型形状の最適化も3D上で検証できる
図面のない金型をそのまま複製できるだけでも十分魅力的ですが、それ以上に魅力的な点が金型設計の最適化です。
例えば、射出成形で従来の金型設計だと、いくらかの割合でジェッティング(表面にうねうねした模様がでること)が発生してしまうトラブルがあったとします。
このような場合は、加工条件か金型の流動設計に問題があると想定されます。加工条件を煮詰めても改善されない場合は、金型設計に問題があると考えていいでしょう。そのような設計の金型をそのまま複製したとしても、同じような不良が出続けることになってしまいます。
そこでリバースエンジニアリングを使って、3D上で流動解析を行い、金型形状のどこに問題があるのかを検証します。3D上で検証し浮かび上がってきた問題は、3Dデータ上で修正し、検証と修正を改善できるまで繰り返します。そうすることによって、実際に修正用の金型部品を作ることなく、3D上で改善ができるのです。
もちろん最終的には部品を作る必要がありますが、改善にかかる費用は実際に部品を作るのに比べて大幅に抑えられるはずです。
古くに作られた金型は、今よりも技術が発達していなかったため、金型に様々な問題を抱えている場合も珍しくありません。古い金型を最新の技術で蘇らせることで、より安定した高品質な製品を作ることが可能です。
多種多様な用途で活用できるリバースエンジニアリング
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