修理・補修部品製作にもリバースエンジニアリング

リバースエンジニアリングとは、すでに存在する部品を3Dスキャナなどを使って計測・分析し、製品開発や製作する手法全般を指します。研究や検証などに利用されることが多くなっていますが、リバースエンジニアリングは部品の修理や補修部品の製作にも利用されます

メーカーでは製品発売からの補修部品の保有期間を定めていることがほとんどです。保有期間にはおおよそ10年前後を設定していますが、保有期間を過ぎてしまうとメーカーは補修部品を処分してしまうこともあります。

そんなときにリバースエンジニアリングの技術を使えば、補修部品を作ることができます。また、正確に寸法などを把握することで、摩耗や欠けの発生した部品にレーザー溶接で肉盛りを行い、再研磨することで、新品と同等の性能を取り戻すような修理もリバースエンジニアリングを用いればできます

リバースエンジニアリングを使った修理・補修部品の製作手順

リバースエンジニアリングで修理をしたり、補修部品を作ったりする場合、次のような手順で行います。

  1. 3Dスキャン
  2. データの修正→3Dデータ化
  3. 加工データの作成→加工
補修部品

3Dスキャン

リバースエンジニアリングでは、3Dスキャンを始めに行います。基本的には製品を分解して、部品単体にしてからスキャンし、部品の寸法を計測していきます。

測定には3次元計測器や3Dスキャナを使うのが一般的で、用途によって使い分けます。精度を求める場合は3次元計測器を使用し、大型の製品を計測する場合や簡易的に計測する場合は、3Dスキャナを使用するのが一般的です。

データの修正→3Dデータ化

スキャンしたデータは点の集合データとなっているので、そのままでは3Dデータとしては利用できません。点のデータを面に変換し、その後、ソリッドと呼ばれる一般的に使われている3Dデータへ変換していきます。このような手順を踏まなければ、このあとに行う加工データの作成を行うことが難しくなります。

場合によっては、スキャンした部品が摩耗したり、凹んでいたりといったこともあるかもしれません。そういった場合は、3Dデータ化する段階で3D上で補修を行います。

また、穴であったり、スキャン時に影になる部分などは、うまくスキャンできていない場合もあるため、そのような箇所は修正する必要があります。3Dデータ化の段階でリバースエンジニアリングの精度が決まってくるため、最も技術や経験が要求される工程です。

加工データの作成→加工

少量点数の加工を行う場合は、次のような加工方法を用います。

  • マシニングセンタ
  • 5軸加工機
  • 3Dプリンタ
3次元加工

これらの工作機械で使う加工データを用意します。作成した3Dデータを元に、加工データを作成します。加工データの作成方法は加工方法や機械によって異なりますが、一般的にはCAM(Computer-aided manufacturingの略)と呼ばれるソフトを使って作成します。CAMを使うことで、3Dデータを基準にして加工工具の動きの設定をできるため、3Dデータが正確であれば高い精度で加工ができるようになります。

リバースエンジニアリングの注意点

リバースエンジニアリングは、図面がなくても現物さえあれば補修部品を作ることができる便利な技術です。しかし、著作権や特許法などを侵害しないように利用していく必要があります。

著作権や特許法では、研究などのために製品を複製するのは問題となりませんが、複製した製品を販売するのは違法となっています。すでに著作権や特許が失効されているような製品であれば部品の複製を行っても問題ありませんが、そうではない製品を販売することはできませんので注意しましょう。

多種多様な用途で活用できるリバースエンジニアリング

修理・補修部品製作 スペアパーツ作成 新製品開発・既製品の研究
金型3Dデータ化・補修 展示用レプリカの作成 リバースエンジニアリングとは